紫式部は、ちょっと人見知りでした。

「人とうまく話せない」悩みは、昔から変わらない。

人と話すとき、なんだか緊張してしまう。
その場にいるだけで落ち着かず、笑顔を作るのにすごくエネルギーを使ってしまう。

そんなふうに感じること、ありませんか？

「もっと自然にふるまえたら」「みんなみたいに、すっと会話に入れたら」

そう思っても、どうしても心がついていかない。

わたしも、人との距離の取り方にいつも迷ってしまいます。

気をつかいすぎて疲れたり、空気を読みすぎてしんどくなったり。

気づけば、「ひとりの方が楽かも…」って思っている自分がいるんです。

おしゃれなカフェで過ごすよりも、家でのんびり、お茶を飲みながら本を読む時間のほうが落ち着く――そんなタイプです。

でも、ある日知ったんです。
華やかな宮中に仕え、『源氏物語』を生んだ紫式部が、実は「人見知り」だったということを。

あんなに立派な人も、不安でいっぱいだったんだ――。
その事実に、わたしの心はすこしだけほぐれました。

この記事では、紫式部の言葉にふれながら、「人見知り」をやさしく見つめ直してみたいと思います。

今のあなたのままで、大丈夫。
そんな気持ちになれる時間になったらうれしいです。

紫式部の日記には、彼女が宮中で過ごしていた頃の心の内が、静かに綴られています。

そこには、こんな言葉がありました。

「人にまじることも知らず、世の中にたえて心ときめくこともなくてすぎぬれば…」

（人と親しく交わることも知らず、心ときめくようなこともないまま日々を過ごしてきた）

「おしゃべりな人たちに交じれず、遠ざかってばかりいた」

ここから、人づきあいに苦手意識を持っていたことがはっきりわかります。

宮中での人間関係に悩む紫式部の姿は、今のわたしたちと何も変わりません。
千年前も今も、人づきあいの不安や戸惑いは、きっと同じなんですね。

“あの人たち、仲良さそう…でも私はうまく入れないな…”
そんな気持ちを、千年前の紫式部も感じていたなんて、なんだか親しみがわいてきませんか？

紫式部が人見知りだったからこそ、彼女の書いた『源氏物語』には、繊細な心の描写があふれています。

光源氏と彼をとりまく人々の感情――すれ違い、戸惑い、誰にも言えない想い。
それらを、まるでそっと心に触れるように丁寧に書き記しているのです。

これは、たくさん人と話せる人よりも、“人の気持ちを敏感に察してしまう”紫式部だからこそ生まれた世界だったのかもしれません。

人見知りって、実は「観察力」が鋭かったり、「相手を気にかけすぎるくらい優しい」ことの裏返しだったりします。

誰かに気を使いすぎて、言葉を選びすぎて、結果うまく話せない。
でもその奥には、深いやさしさがちゃんとあるんですよね。

わたしたちはつい、「人見知りを克服しなきゃ」と思ってしまいます。
「もっと明るく」「もっと気さくに」と、自分に言い聞かせてしまうことも。

けれど紫式部は、そんな自分を無理に変えようとはしていなかったように見えます。

むしろ、不器用なまま、人との距離に悩みながらも、その繊細な心で、静かに、丁寧に、誰かの気持ちに寄り添う言葉を綴っていったのです。

紫式部が教えてくれるのは、「無理に変わらなくていい。いまのあなたのままで、やさしい世界はつくれるよ」という、やわらかくてあたたかいメッセージ。

🕊️ 今日できること：

無理に誰かと話さなくていいから、自分にやさしい言葉をかけてあげて。
― 誰かに言わなくても、自分にそっとかけてあげるだけで、心がふわっと軽くなることがあります。

人見知りって、直すべき「弱さ」ではなくて、あなたにしか持っていない、やわらかくて、深いやさしさのかたち。

紫式部のまなざしを通して、わたしはそう思えるようになりました。

たくさん話せなくてもいい。うまく輪に入れなくてもいい。
それでも、あなたのやさしさは、ちゃんと誰かに届いているのです。

どうか、自分の中にある小さな灯りを大切にしてください。
たとえ目立たなくても、それは確かに、あなたらしさを照らす光なのだから。

ほんのひとときでも、心がゆるむ時間になっていたら嬉しいです。
今日という一日が、やさしく灯りますように。
それではまた、言葉の灯りの下で。